僕の母親は今から40年前に59歳で亡くなった。その母親のいとこが福島県に一人住まいをしている。高齢で90歳半ばのおばあちゃん。元気で毎日庭の草むしりが趣味の様に頑張っている。一人息子が茨城に住んでいて、月に3度ぐらいのペースで母親に会いに来るということだが、母親は自由気ままの生活を謳歌している。高齢でもあるので時々、僕は手紙を書いてコミュニケーションを図る。電話をかければ簡単なのだが、敢えて電話はかけず手紙を送る。すると間髪を入れず近況を綴った返事が来る。このリズムはなかなか心地よくかれこれ10年くらい続いている。そんなさなか、NHKテレビを見ていたら台風19号の被災地情報が画面の周囲に流れた。何気なく見ていたら、正におばあちゃんの住んでいる地域の名前が出てきた。久慈川のそばの東白川郡矢祭町。一瞬、これは大変と電話をしてみたが通じなかった。ひょっとして最悪の事態か??と思っていつものようにハガキをだした。取り敢えず消息を知るために。慌てて出したものだから、郵送料が新料金になっていることをすっかり忘れてストックしていた古い62円ハガキで出してしまった。1円不足。もし被災していて、不足分を催促されたらこんな失礼なことはない。
消息を尋ねる手紙をだして1週間もしないうちに、しっかりした字が書かれたハガキが届いた。
「台風19号は新聞テレビを見ていると各地の被害に驚きますが当地・戸塚は何の被害もなく、一寸雨が強かったくらいで無事に暮らしております。」と返事が戻って来た。思わず胸をなでおろした。いつも昔買った切手やハガキで郵送されてくるが、今回は20円ハガキに面倒だったのか62円の切手が貼られていた。19円過剰。僕の一円不足を19円で返却してくれた感じだ。