蝉の抜け殻
梅雨明けの少し前から蝉の鳴き声が聞こえだした。家の周りは木だらけだから蝉が出てくるのは当然といえば当然だが、声はすれどもどこで鳴いているかということは分からない。昔だったら鳴き声がどこから来ているのか懸命になって探したものだが、今は全くその気にならない。
小学校時代には針金で輪を作り、それを竹竿の先端に付けてその輪に蜘蛛の巣を絡ませて昆虫採集の道具を作った。蜘蛛の巣を輪に何十にも絡ませるとベタベタして昆虫がくっつく。捕まえた昆虫に蜘蛛の糸が絡まないから昆虫が綺麗だった。お金がある時には家の側の子どもの溜まり場だった駄菓子屋に出かけた。ここでトリモチを売っていて、店の奥の方から缶に入ったトリモチを割りばしにつけて売ってくれた。本来は鳥を採るためのものだったのだろうがこのトリモチを長い竹の先に絡ませると高い木にとまっている蝉や遠くにとまっているトンボがペタリとくっついて採集出来た。早めにトリモチから離さないと蝉やトンボにトリモチが付いてしまうので急いでトリモチから引き離した記憶が今も鮮明に残る。
庭のペパーミントの葉にセミの抜け殻が付いていた。きっとこの下の地面から登ってきたに違いない。地下生活をスタートした時にはまだこの場所にペパーミントは植えていなかったから地面に出て来てさぞかし驚いたに違いない。セミの抜け殻をみるといよいよ夏も本番だ。